6月18日ツール・ド・美ヶ原試走記
6月18日。午前10時40分。自分は今、長野県松本市にある松本市営野球場の駐車場にいる。 来週の今日、6月25日、ここをスタート地点として、ツール・ド・美ヶ原高原自転車レース大会2006が開催される。今日はそのための試走に来ているのだ。
本当は先週の、諏訪圏縦断サイクルマラソンのついでに下諏訪から松本まで足を伸ばし試走する予定だった。ところがリアディレイラーが脱落するというアクシデントがあり、それはかなわないこととなった。
今日も天気予報の降水確率は高く、松本遠征は断念しかけていたが、朝4時半に見た美ヶ原高原のライブ映像では雨がなかったので、急遽、こうしてやってきたというわけだ。
八王子駅で早朝のスーパーあずさ1号に乗車、一路松本を目指した。でも、途中の岡谷まではずっと雨降り。「無駄足だったか?」 と諦めかけたが、松本に着いてみると降っていない。読みが当たり何とも良い気分だ。もともと、自分はこういう時の天気運は悪い方ではない。
では、来週の本番に向けて、早速タイムアタックを開始しよう。ここのコースは何ともすさまじい。野球場駐車場では手元のGPSでは標高645mを指している。ここから標高1,900mの美ヶ原高原を目指すのだ。しんどいのは百も承知。いざ、時計のスタートボタンを押した。
スタートしてして50m程度走ると、コースは右折。浅間温泉街に入
る。 既にここでも登り坂なのだが、温泉街を抜けて、青い標識の通り道なりにクランク状に右折して行くと、いきなり最大の難所、15~18度のゲキ坂が待っている。
最初にここを登ったときには、あまりに急でジグザグ登りしか出来なかった。昨年は、準備不足のため途中で足が動かなくなった上、チェーンがはずれるというアクシデントがあった。ともかく、悲しくなるほどの難所だ。
ただ、ここを経験してしまうと、生半可なヒルクライムはやっていられない。
来る者全てを拒むような18度のゲキ坂。今や興味の中心は自転車よりもランニングに移ってしまった自分であるが、ここだけはライフワークとしてはずせない。登り切った時、エクスタシーすら感じさせてくれる坂だ。(そんな自分を、カミさんは『変態だ』と言う…。)
それはともかく、今年は自転車を降りることなくやり過ごしたい。
この坂も直登。どーんとまっすぐ続く18度のゲキ坂は、本当に戦意を喪
失させてくれるに十分だ。ギアをローに入れ、できるかぎりシッティングのまま登っていく。心臓の鼓動は大きく、既に息切れ状態。まったく、こんな坂をコースにするなんて、誰が思いついたのだろう?
この坂の嫌なところは、ようやく終わりと思った神社の先に、まだ同じような斜度の左カーブの上り坂が控えていること。いやはや、まっすぐだろうと曲がっていようと、ゲキ坂はゲキ坂なんだ。
と、その時アクシデントに見舞われた。まだ昨夜の雨で濡れた路面。18度を登るべくトルクをかけたが、タイヤが道路の凸凹補修のタールに乗ってしまった。タイヤがずるっと滑りバランスを失った。落車は免れたが、足をついてしまった。
こうなると、再びまたがって登るのは難しい。結局、しばし歩いてしまった。こうなると自己記録は難しいかも。ともかく、踏み続けるしかない。
ツール・ド・美ヶ原は、第1CPまでのゲキ坂が大きなヤマだ。ここをいかにめげないでクリアするかでその後が決まる。第1CPの美鈴湖は標高約1,000mだ。
腰の痛みに耐えながら、半分べそをかきながら、ともかくCPまで無心に踏み続ける。「美鈴湖まであと3km」の表示が見える。この地点の標高は837m。3,000mで163m登るということは、平均でも8%以上の斜度だ。それが3km続く。いやはや、なんとも…。ともかく踏み抜くしかない。
美鈴湖を案内する看板が出たら、それがお疲れさんの合図だ。湖畔のわずかな平坦道路で、アウターに入れ、それまでの鬱憤を思い切りはき出す。美鈴湖まで、下り路線のつかの間のパラダイスだ。
第一CP(チェックポイント)を過ぎると、道は左にカーブし、再び登りの区間となる。ここからの区間は今までと比べれば、斜度はそれほどでもない。けれど、これでもかこれでもか…と次から次へと登りコーナーが迫ってくる。今日のように路面が濡れ、μが下がっている時にはタイヤのグリップ力を失わないようなライン取りをすることも重要だろう。ここのコース整備も、毎年少しずつであるが、良くなっている。以前は凸凹だったコーナーが今年はかなり整備されている印象を受ける。
途中、道の両脇の林が途切れ、松本市街が見渡せる場所がある。レースの時は、景色どころじゃないが、今日はクルマを止めて眺めてみた。天候も良く、梅雨の晴れ間の市街が美しい。ここの標高は1,443m。美鈴湖からすでに440m登っている。
今日は練習なので、いろいろ試してみる。早めに軽いギアに入れ、とにかく回し続けるのが良いのか。一段重くして、踏み抜き続けるのがいいのか。どうも後者のほうが良さそうだ。積極的にスタンディング=ダンシングを使い、低いギアを踏み抜く。
第1CP以降は、とにかく、同じような坂が続く。どれがどのコーナーだか、いちいち覚えていられないくらいだが、気をつけるのは、たまに来る平坦路でスピードを稼ぐこと。ここでほっと一息入れていたら、タイムアップはおぼつかない。標高1,900mまで、とにかく、踏み続けるのみだ。
途中1500m地点。ひとつ中間のヤマ場がある。上り下り車線がセパレートになっている。登り専用の左側の道路を抜けると、『どど~ん』と、また直登の長い急坂が待っている。
ダンシングだけでは腰が持たない。シッティングでは重いギアは踏み抜けない。挑む者をあざ笑うかのような長い坂に、滝の汗を滴らせながら、登っていく。
標高は1,700mを超えた。このあたりになると、オレンジ色の小さな花が美しい。もっとも、こちらはそれどころではないのだが。
第3CPを過ぎると、武石峠との分岐点を示す標識がある。ここまで来れば、ゴールまではあと5kmだい。GPSの標高は1,852mを指している。
最後の登りをなんとかこらえ、この景色が見えてきたら、今度はダウンヒルのご褒美が待っている。急に開ける視界。まさしく美ヶ原高原の稜線。遠くに右上に見える電波塔をめがけて、アウターローで思い切り回す。今までのストレスを吹き飛ばすように、最高速チャレンジだ。今日の最高速度は58kmであった。
ただし、そこはやっぱり美ヶ原。あと下るだけのフィニッシュは許してくれない。ゴールのドライブインまでの登り返しが待っている。距離20km、高度1,300mを既に登って来た身には、ここがものすごくキツイ。それでもゴールは間近か。
ご褒美の冷やしトマトを思い浮かべながら、ここまで来たら自虐の気持でペダリングしつづける。
ようやく、ドライブインの駐車場入り口が見えてきた。ここが、野球場から遙か彼方に見上げた、美ヶ原のゴールである。
今日のタイムは1時間49分16秒。途中の下車が響いたか、あまり満足できるタイムではない。まあでも、本番に向け良い練習にはなった。スタート地点からの20.52km、標高1,907m、標高差1,260m、消費カロリー2,198calであった。高原駐車場に愛車を止め、写真を撮ったら、その下にモクモクわき起こっている雲が見えた。
一休み後、道路状況の写真を撮りつつ下山する。温泉街の公営温泉、「浅間温泉会館」で汗を流して一息つける。いつもながらヒルクライム後の温泉は最高だ。
本番まであと1週間。ウイークデーは自分はほとんど自転車に乗ることはない。この感覚を忘れないようにして、25日に備えることとしよう。そそくさと荷物をまとめ、再びあずさに乗車し横浜を目指す。早く帰ってクロアチア戦を見なくっちゃ。
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